第81回日比谷笑談会

 第81回例会は去る3月25日(水)、銀座ラフィナート(旧京橋会館)で開催、出席会員は10名でした。
 今回は緒方研二会員の推薦により、元主席理事、研究開発本部副本部長の加藤満左夫氏(平成二年退職)に「シリコンバレーで過ごした第二の人生」という話題でお話を伺いました。
 恒例により植木会長の懇篤な挨拶に始まり、続いて緒方研二会員による乾杯の後、本題に入りました。
 席上配布された資料「シリコンバレーでのリタイア生活 生活実感から」に基づいて進行しました。

○はじめに

 NTTを退職して富士ゼロックスに移り役員を経て平成8年からシリコンバレーにある同社パロアルト研究所の会長として赴任した。


富士ゼロックス・パロアルト研究所

 任期がきて退任したが、同地の快適な気候、生活しやすい環境、新鮮な野菜や果物、面倒見のいい医療システムが魅力で、60台も終りに近い年齢であったが、家を購入して暫く住むことにした。
 前後合わせてシリコンバレーに12年暮らしたことになる。

 ○生活実感
 40年ほど前にイリノイ大学の計算機研究プロジェクトに通研から派遣され2年間を過ごしたことがあるので、米国生活は2度目になる。
 その当時と今回を比べると大きな違いは日本料理の普及で、アメリカ人の健康志向と合って拡がっている。
 また最近では料理店に限らずスーパーマ―ケットには持ち帰り寿司が置いてあるし、さらに会社のカフェテリアにもでるようになってきた。

 ○高度の医療を提供する待たせない病院
 日本の大病院で待たせられるのは普通のことであるが、向こうで世話になったスタンフォード大学病院では、アポイントメントがとれていれば、10分と待たせられることはがない。
 日本の病院も予約を取るようになったが、その予約といっても幅がありかつまたそのとおりにならないことも経験する。
 米国で秘書が予約を受けているところを見ているとコンピュータで三〇分くらいごとに切ってある枠に受けたアポをどんどん入れている。
 ドクターはそれに従って仕事をするという風に秘書との関係が上下というよりも職能分担の関係としてはっきり理解されている。

○退職後の健康保険
  65歳に達すると政府の保険MEDICAREに加入できる。
 しかしそれだけではカバー範囲が限られているので、これに組み合わせて提供されている民営の補完保険に入る。
 その会社、保険の種類ははなはだ多く複雑だが選択の自由と競争を導入してコストを下げる努力がとられている。

 ○家を売る
  不動産の売買の仲介はリアルターと呼ばれ家庭婦人の良い職業になっている。
 家を売買のマーケットに出す前、商品価値をあげるための化粧直し、室内の調度や飾り付け、庭や玄関アプローチの草木の手入れなどそれぞれ専門の人たちがいて、リアルターはこれらをオーガナイズする役目を果たす。また所有権の移転と買い手の銀行ローンの実行とを同期させ、州への届け出など付随する事務手続きはタイトルカンパニーが司りこちらは現金に手を触れる必要はない。アメリカ人の家に対する感覚は生活に応じて脱ぎかえるような感覚で、永久に維持するというような執着がない。

 ○消費税
 カリフォルニアでの税率は七,二五%だが、生鮮食料品は無税となっていて除外されているのはいい制度だと思う。つまり自分で料理すれば無税だがレストラン食べれば課税される。最低限の生活への配慮をしている。

 ○交通ルール
  帰国後交差路での出会いがしらの事故をよく聞く。確かに双方向同じような大きさの道路でどちらが優先か分かりにくい場合がある。
 向こうではそのような場合四方向一旦停止の交差点になって、右手に見える車が優先する。また大きな道路の交差点左折(日本の右折)は直進車に気を使うが、向こうでは左折(日本の右折)信号の矢印が先に出て直進を横切る車を先に通過させ、これが終わってから直進信号が青になる。これによって青で突進してくる直進車と左折(日本では右折)車の事故を防いでいる。

 ○人と人のふれあい
  研究進捗状況のREVIEWで経験したことだが、問題がないときOKといわない。VERY GOODを使う。すこしでも 感じよくというのがマナーになっている。他人とすれ違うときやエレベータの中に乗り合わせたときなど相手を知らなくても眼と眼をあわせるか簡単な挨拶をする。一回どこかで出会ったことがあれば握手、名前を知っていればハグ(抱擁)。

○市民生活の住み心地
 政治と経済の状態には愛想をつかすばかりだが、市民社会をすこしでも住みやすくするというルールそしてルールを守る習慣は依然として健在であり建国以来のスピリットが生き続けている。

 ○XEROXのパロアルト研究所とパケット交換
  XEROXのパロアルト研究所はマウス、グラフィックインタフェースレーザプリンタなど現在のパソコンの基本の技術を創出したことで著名である。
 通研においてパケット交換の研究に従事したが、丁度コピー機がデイジタル化されインターネットにつながってゆく時代であったのでその経験が役に立った。
 最後にあたり通研当時ご指導いただいた方サポートいただいた方々に感謝が表されました。

話題が終わって懇談にはいり、緒方さんから現職の頃の研究開発の感想やエピソードが披露されました。
 加藤さんと多くの会員からもそれぞれ思い出や感想などが披露されました。
 例会は和気藹々の雰囲気の中で経過し、春の日の午後を楽しく過ごしました。なお本稿のまとめは加藤満左夫さんのご好意によるもので、厚くお礼申し上げます。   

(岩淵 忠 記)